新システムの本番稼働前の移行はもちろん、テストやトレーニングの前にも実施されることのあるデータ移行の工程は大きくデータ移行準備、データ移行リハーサル、本番移行に分けられます。
当記事ではデータ移行における工程の前半部分である「データ移行準備」について説明します。
データ移行準備
データ移行を成功させるためには、念入りな準備が欠かせません。データ移行の準備では移行対象となるデータの調査やデータ移行の計画策定、移行ツール開発・手順書作成などを行います。
データ調査
データ移行の中で一番最初に行うべきは移行対象となるデータの調査行うことです。移行対象となるデータは何があるのか。データの中身はどのようになっているのか等を最初の段階である程度把握しておかないと、データ移行そのものの計画を立てることが出来ないためです。
データ調査では改めて導入対象となるシステムを確認し、現行システムから移行対象となるデータを選定し、データ移行としてのスコープをある程度固めていきます。
この段階で作成されるべき成果物は「移行データ対象一覧表」です。データ調査の段階ですべてを確定させる必要はありませんが、この一覧表は後続のタスクである計画策定や移行手順書作成にも使われる非常に重要な成果物となります。
また、データ調査の工程では実際にデータを現行システムからExcel等で出力し中身を確認します。どの項目にどのようなデータが入っているかをある程度把握することで、データのクレンジング方針を見定めておきます。
データクレンジングについては以下の記事で解説しております。
データ移行計画策定
移行対象データの目星がある程度ついた段階で、データ移行計画を策定していきます。データ移行計画で策定する項目は主に以下通りです。
- データ移行方針
- 本番データ移行実施日時
- スコープ
- 体制・役割
- 移行リハ等含めた全体マスタスケジュール
- WBS
- コミュニケーションプラン
- 業務影響
- コンティンジェンシープラン
移行のリハーサルを行わない事には詳細を決められない部分があるため、最初の段階では分かる範囲の記載で問題ありません。
リハーサル等を行い、データ移行の手順や関係者を明確にしていきながら計画書をアップデートしていきます。
移行ツール開発・手順整備
計画策定した後は、移行要件定義を行います。
移行要件定義では、移行対象のデータ1つ1つに対して以下のような項目を確認・定義していきます。
- 移行データの中身の詳細確認
- 移行手順
- 業務影響
- 新しいデータベースとのマッピング
中身の詳細確認は、どのようなデータが入っていて、どこまでのデータを移行対象とするか等を業務側の担当者と決めていきます。会計データであれば過去5年間の仕訳伝票は移行したいなどの要件があるはずですので、データごとに確認していく必要があります。
移行手順については、どういう手順でデータを登録すれば不整合が起きないのかを考えながら纏めていきます。データによっては先に登録されていないと登録できないデータもあるので、他の要件とも整合性をとりながら1つ1つ手順を明確にしていきます。
業務影響については、本番データ移行する前の凍結期間や本番移行後の訴求入力などを、業務側と認識を合わせていきます。特に訴求入力は業務側の負担も出てきますので、後でこのデータは本番の時に移行される認識だったとならないよう注意して調整をしていく必要があります。
新しいデータベースとのマッピングについては、現行データベースの項目と新しいデータベースとの項目を見比べて、どの項目にどのデータを入れていくかを検討していきます。日付など分かりやすい項目については特に悩みませんが、備考情報やその事業独自のデータなどは新データベースのどこに登録されることが有効なのかを見定めていく必要があります。
まとめ
このようにデータ移行は準備段階で様々なタスクをこなしていく必要があります。成果物を纏めると以下のようになります。
- 移行データ対象一覧表
- データ移行計画書
- 移行要件定義書
- 移行手順書
移行の方法によって必要な成果物も変わってくるため、データ調査などを通して自分たちの移行方針を定めてから、各種作業に取り組むことが重要です。