小・中規模のシステム導入プロジェクトにおける体制作りの考え方

システム導入プロジェクトを発足させるうえで考えなければいけないのが、プロジェクトを遂行していくメンバーとその体制作りです。
また、システム導入はベンダーだけに任せておいて成功するほど、簡単ではありません。
発注者側も現行の業務フローを作ったり、要件定義に参加したり、設計したりとやるべき事は多くあります。
当記事では比較的小規模なシステム導入のプロジェクトにおける、発注側の体制づくりの考え方について解説します。

体制作りの目的

どんなに小さいプロジェクトでも関係者が複数名いる場合は、システムを発注する側にも体制作りが必要になります。
まずは、体制が果たす役割や作成する目的を解説します。

  • レポートラインを明確にするため

レポートラインとは、作業報告や意思疎通を行う指揮系統に従った報告経路のことを言います。
自分たちの行った作業の進捗状況等の報告は誰にすればいいのか。または、プロジェクト全体の状況は誰に報告すればいいのか等を体制図を使って明確にします。

  • メンバーの担当や役割、だれの指示で動くのかを明確にするため

プロジェクトでは、誰がメインで作業を行うのか、指示する人は誰なのか、承認を行うのは誰なのか等を決める必要があります。
あらゆる人と役割が登場するため、体制図を使い、それぞれの役割や指示系統を明確にしていきます。

  • 作業中に不明点が発生した際の確認場所を明確にするため

プロジェクトを進めていくと必ず誰かに聞かなければ分からないことに遭遇します。
場合によってはプロジェクトの主メンバーではなく、通常業務を行っている人に聞く必要性も出てきます。
そういう時のために、プロジェクトメンバーだけでなく、業務側のメンバーも体制図に記載する事で、確認事項が発生した時にすぐに対応することができるようになります。

体制図に記載される主な登場人物と役割

体制図には記載するべき登場人物(もしくはチーム)がいくつかあります。
ここでは小・中規模プロジェクトにおける主な登場人物と役割の解説をします。

プロジェクトオーナー

プロジェクトオーナーとは「プロジェクトの開始準備状況や途中経過の報告を受け、プロジェクトを継続するかなどを経営的視点で判断する人物」のことを言います。
基本的にプロジェクトの実行については手を動かすことはありませんが、節目で登場し予算やリソースの変更などの経営的意思決定を行います。

プロジェクトマネージャー

プロジェクトマネージャー(PM)はプロジェクト全体を成功させるために計画立案、要員調整、リーダーシップ、コミュニケーション管理、リスク管理など多岐にわたる役割を果たします。
また、メンバーへの作業指示やレビューなど、成果物の品質に直接携わるタスクも行うため、プロジェクトの成功はプロジェクトマネージャーのスキルにかかっていると言っても過言ではありません。
さらに、プロジェクトマネージャーはプロジェクトオーナーへの報告だけでなく、状況によっては要員やスケジュールを調整するための交渉も行います。

PMO

PMOとはProject Management Officeの略でプロジェクトマネージャーをサポートしつつ、チームを横断してプロジェクトの計画策定や管理などを行うポジションです。
プロジェクトの規模やPMのスキルによってはPM1人ではタスクを回す事ができない場合があります。
PMOにはプロジェクト管理に精通したメンバーをアサインしPMをうまくサポートする事で、プロジェクトを成功に導きます。
PMOの役割については以下の記事で詳細を解説しております。

プロジェクト推進チーム

プロジェクト推進チームはPMからの指示に従い、実際に手を動かしてタスクを進めていくメンバーです。
ここにアサインされるメンバーは指示内容を的確に理解し、納期通りに納められるスキルが求められます。
また、作業の難易度や計画の精度によっては納期を伸ばしたり人数を増やすなどの対応をPMに求めることもあります。

業務メンバー

業務メンバーはプロジェクトを進める上で業務側に確認する必要が出てきた時に、窓口となるメンバーのことです。
理想でいえば、業務のメンバーも推進チームに加わり、稼働率100%で対応してもらうことが望ましいですが、通常業務もあるため、難しい場合がほとんどです。
しかし、業務メンバーへの質問等はどんなプロジェクトでも必ず発生するため、対応できるメンバーをアサインしておきましょう。

インフラチーム

システムを導入するプロジェクトであれば、必ず導入するための基盤が必要になります。
また、データベースなどのミドルウェアについても何が最適かを考えて決めていく必要があります。
インフラ関連のタスクには専門的な知識が求められるため、専任チームを作りシステムの特性を踏まえたうえでタスクをこなしていけるメンバーをアサインしましょう

まとめ

ここまで体制図を作る目的と小・中規模プロジェクトの体制図に記載されるメンバー、そしてその役割について解説してきました。
体制図の作成はプロジェクトを進めていく上で必要になるものですが、1つ注意点があります。
それは体制図に描かれている枠に囚われて、チーム間のコミュニケーションが疎かになってしまうことです。
プロジェクトの成功率はメンバー1人1人のスキルではなく、コミュニケーション量に相関すると言われています。
チーム間のコミュニケーションが疎かにならないようPMやPMOはコミュニケーションを活性化させる施策を考えてプロジェクトを推進していくことが重要です。