システム導入の品質を維持・向上させる為にやるべき3つのこと

システム導入は基本的に形のないものを作り上げていくため、品質が良い状態なのか悪い状態なのかハッキリと断定することが難しいという特徴を持っています。
そのため、テストフェーズなどでシステムの品質が悪いことが判明し、開発からやり直すということも珍しくありません。
また、予算が枯渇するなどの要因によってはプロジェクトが中断してしまう場合もあります。

そういった状況を避けるため、当記事ではシステム導入プロジェクトにおける品質を維持・向上させていく手法について解説します。

品質を維持・向上させるためにやるべき3つのこと

システム導入プロジェクトでは以下の3つをルールとして定め、正しく実行することで品質を維持・向上させることができます。

  • 成果物のレビュープロセスを確立する
  • モニタリングを実施する
  • ゲートチェックを実施する

成果物のレビュープロセスを確立する

システム導入プロジェクトでは要件定義書や設計書、テスト仕様書など様々な成果物が作られます。
これらの成果物は、構築するシステムの品質に直結するだけでなく、導入後のシステムを運用する際にも使われる重要なドキュメントになります。そのため、必ずPMなど上位者のレビューを受け、指摘等を記録する事が大切になります。
その理由として、レビューを行ったか不明確な成果物が散在すると、あとで見た時に正確なドキュメントが何なのかが分からなくなり、現場は混乱してしまうためです。
きちんとドキュメントごとにレビュー記録を残しておくことで、信憑性のある成果物と認識されて、余計な疑念なく作業に取り組むことができます。
また、PMが各チームの成果物をチェックすることで、チームを横断しての考慮が必要な事項が抜けていないかを確認することができるため、PMがすべての成果物をレビューすることは非常に重要になるわけです。

成果物のレビュープロセスは、プロジェクトが本格始動する前に計画として策定しておきましょう。
基本的なレビュープロセスは担当者→チームリーダー→PMとなりますが、その他に記録表のテンプレート作成や指摘の修正確認方法など細かいルールも定めておきましょう。

モニタリングを実施する

モニタリングとはプロジェクトの状況を定期的に確認する監視活動になります。
その為、モニタリングする側はプロジェクト推進メンバーとは別の第三者機関であることが理想です。
モニタリングの実施は主に進捗状況、課題の消化状況、レビュー記録を定期的に確認することで、プロジェクトの品質状況を把握していくことが目的となります。

進捗状況はいうまでもありませんが、計画したスケジュールに対して予定通りプロジェクトが進められているかを確認します。
また、進捗の遅延が起きる兆候があればそれを察知し、是正対応を検討したり、スケジュール変更や要員追加などの意思決定を行います。

課題の消化状況については、プロジェクトで発生した各種課題を対応期限までに消化できているかを確認します。
また、課題の発生件数が著しく多い場合や、件数が少なくても1つの課題がプロジェクトの進行に影響するほど大きいものである場合は、対策チームを作るなどの意思決定を行います。

レビュー記録については、作成した成果物がレビュープロセスに則って確認されているか、記録をみて確認します。また、指摘事項を反映させた記録が残っているかも合わせて確認します。

モニタリングを実施するうえでの注意点はマイクロマネジメントにならないようにすることです。
ここで言うマイクロマネジメントとは、モニタリング実施者(第三者機関)が推進チームの成果物や状況を細かくチェックし、過干渉してしまうマネジメントのことを言います。
モニタリングは、品質を保ちつつマイクロマネジメントにならないようにする必要があるため、バランスが重要になります。
一方でモニタリングを行うことを公言しておくことでプロジェクト全体が引き締まる部分もあるため、うまく機能するよう実施要領を検討するようにしましょう。

ゲートチェックを実施する

ゲートチェックは各フェーズの間で行う品質管理活動です。
その実施目的は、各フェーズの作業漏れや品質不良が次フェーズにすり抜けることが原因で発生する手戻りを防ぐことと、次フェーズの計画が立案され各種タスクが実施可能な状態にあるかを確認することです。

ゲートチェックもモニタリングと同様に第三者機関やプロジェクトオーナーがプロジェクトの状況を評価し、次フェーズへ進めるかどうかの判定行います。
ゲートチェックで確認するべき主な内容は以下の通りです。

  • 該当フェーズにおけるタスクおよび成果物作成の完了状況
  • 成果物の品質
  • 課題やリスクの対応状況
  • 次フェーズの実行計画および開始準備状況

タスクおよび成果物作成の完了状況については、フェーズ開始前に策定したプロジェクト計画書に記載されている各種タスクおよび成果物が滞りなくすべて完了しているかを確認します。
完了していないものがある場合でも、その理由が明確で納得感があればゲートチェックとしては問題ありません。

成果物の品質については、ゲートチェックですべての成果物の品質を確認することは難しいため、基本的にはレビュー記録表を確認することになります。
成果物のレビューがきちんと行われ、指摘事項が適切に反映されているかを確認します。
レビュー記録表にレビュー時間や指摘密度、指摘対応の完了フラグなどをつけておくと、ゲートチェックの時に機械的に判定することができるため、レビュー記録表のフォーマットは予めよく考えて準備をしておくことをお勧めします。

課題やリスクの対応状況については、フェーズ内で対応がなされているかどうかを確認します。
当該フェーズで課題やリスクが解消されていない場合は、次フェーズ以降への申し送りとし、次フェーズの推進に影響がないこと、および次フェーズ以降での対応方針・計画が明確になっているかを確認します。

最後に、次フェーズの実行計画が策定され、要員確保などの準備に抜け漏れがないかを確認します。基本的にゲートチェックで問題なしとなれば、すぐに次フェーズが開始される為、実行計画書の内容や準備状況はこのタイミングで確認します。

まとめ

ここまで、システム導入プロジェクトの品質を高めるために行うべき、以下3つの活動について解説してきました。

  • レビュープロセス
  • モニタリング
  • ゲートチェック

いずれも共通して言えることは、計画に対する品質の確認になります。
そのためまずは計画書の作成が重要となりますので、フェーズが始まる前に策定し、関係者の合意を得るようにしましょう。